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TORO社訪問記(2011年)-2 TOROガット弦についての質疑など

2011/04/26

TORO社のガット弦について、いくつか細部を確認してきました
ご愛顧くださっている皆様の疑問におこたえする、または更に愛着をましていただく一助になれば幸いです。どうぞ最後まで目をお通しください.
s_TOROBrakingTest.jpg
1.TOROの品質管理はどうやって行っているのか?
- 素材:自然の材料を使っているので、原材料の仕入れには現地まで出向いて信頼できる業者を選ぶ
 新鮮な状態で塩漬け保管されることが大事なので、作業環境の整った業者のAA級素材を仕入れる
- 工程:ほとんどが手作業なので、実際には昔からの製法や手順にしたがって行っている
- 自然の材料を使っているので材料レベルでのばらつきは避けられず、それを製品段階でチェックするために「破断試験」を行っている
バイオリンの弦は素材段階では260cmのものを作る。実際のバイオリン弦は60cmなので、この260cmのものから4本(=240cm)とって、残りの20cmを「全て」破断試験にかける。これはこのテンションゲージで圧力をかけていき、太さに応じて決めてある規定の張力以下で切れた場合は、その素材からとった4本はすべて廃却する
メーカーでここまでやってくれているので、私のところでもお客様に安心して使っていただける方法はないかと考えてみました。完成してしまった弦の不良は生産、流通段階ではチェックのしようがないので、下記の方針でサポートさせていただこうかと思います。やり方は実情に応じて換えていきますので、ご要望などありましたらぜひご意見をお聞かせください
●TORO弦の不良品対応について
「原則として、ご購入後2週間以内の断線は同じ弦と無償交換いたします」

お客様からの申告と、現品の写真(デジカメなどのデータ)または現品をお送りください
*スペアの弦など2週間以内ではわからない場合もあると思いますので、上記の方法ではカバーしきれません。とはいえ、無制限にはしにくいので悩ましいところです



2.「ヴァーニッシュ」の材料ややり方は?
s_Lorenzo.jpg - 「ウレタン系」の素材でいろいろな種類を試して一番良いと思うものを使っている。比較的柔らかく、自然なガットの音をそこなわないものを選んでいる
- 工程としては、乾燥が終わって太さの精度をあわせた後、一本ずつつり下げて塗布する。一度塗った後は基本的に24時間置いてから二回目を塗る。3xヴァーニッシュについてはさらに24時間後に塗る(実際に吊して塗る作業を確認しましたが、これだけ長いものを上から下まで、何十本も塗る単純作業。ロレンツォ君が汗をかきながらやっていました
- TORO社の生産する弦のうち90%がヴァーニッシュ弦だそうです

3.巻線について
s_TOROSilverRoll.jpg - 芯になるガット弦は、すべてヴァーニッシュにしてもらうように数年前に申し入れてありました。それを再度確認したところ「芯線は間違いなく全てヴァーニッシュをかけている」とのこと - 巻線については日本では宝飾貴金属のブランドとして知られているウノアエッレUNOAERRE社から仕入れている。純度95%(と言ったと思います (^_^;)の銀を太さ別に1kgのロールで仕入れている。たまにロールの状態の悪いものがあるので、そういう場合は返品するとのこと
- 巻線の素材(銀)を回収はしないのか、と聞いたところ、まったく考えたことがなかったそうです。実際にどの程度の回収ができるのか、中間の送料などを考えると採算にはあわないのでしょうけれどもね。コントラバス弦などは結構なボリュームになりそうな気がしますが
- 銀を完全に表に巻いてしまうのではなく、銀とガットの混合巻(ギンプとも呼ばれる)はできないかという話を以前したことがあり、トライアルはしてくれたそうですがうまくいかないとのこと。もう一つ新手法もトライアル。普通とは逆に、芯に銀線をいれてそのまわりにガットを巻いたもの。実際に試作したものを見せてくれましたが、これもまだ実験中。それにしても忙しい中がんばっていろいろ試してくれている姿勢に感謝です

4.羊腸の内側と外側の使い分け
羊腸はソーセージの皮の部分を想像するとわかるように、もともとは筒状になっています。これを基本的には2本に裂きますが、もともとぐるぐると巻いている外側と内側で太さや質が違うので、仕分けをして使います。外側のほうが繊維が直線的で形もまっすぐなので、細い弦(特にバイオリンの1弦など)に主に使います。内側は太く、形も不揃いになりやすいので、チェロやコントラバスなどの太い弦に使います。1~2枚目の写真は、筒状の腸を「えぼし」型をしたへら状の突起にかぶせて、両端を反対側からひっぱって二つに裂いているところ。それを内外や、さらに太さで仕分します(3枚目)。その中から、作る弦によって太さなどを組み合わせて、なるべく最終の弦の太さに近いものを作っていきます(乾燥後に削り取る部分をなるべく少なくするため)
s_TOROSplitter1.jpg s_TOROSplitter2.jpg s_TOROSorting.jpg s_TOROTwisting.jpg

5.裸線の太さの管理は?
s_TOROThicknessGauge.jpg
100分の1mm単位で太さを作り分けているのはどうやって管理するのか確認しました。もともと乾燥をすませた弦の表面を平らに削る機械(特注)があり、それを長年使っているので、その機械のゲージで狂いはないが、時々サンプルチェックをする
「でも、この機械はあまり精度はよくないから実は必要なときはマイクロメーターを使うんだ」とのこと。感心したのは、マイクロメーターも万一落としたりして狂いが出ることがあるから必ず2台用意して時折比較しながら狂いのないようにしている、とのことでした

6.牛か羊か
TOROとしては圧倒的に羊が多い。現状でTORO弦の最大の輸出先であるフランスの業者さんの場合、100%羊腸弦だとのことでした。(ちなみに弊社は3番目とのこと。ご紹介始めて4年で3番目になれたのは、ひとえに皆様のご愛顧のおかげです。)
TOROに牛(オックス)で注文がくるのはリュート用とギター用があるそうです。価格(少しだけ割安)と音色が撥弦楽器にむくのでしょうか

7.チェロのエンドピンの話と、TORO社のビジネススタンス
今回、お客様からのご質問の一つに「ガット弦にあうチェロ用のエンドピンというものはありますか」ということがありました。TOROに聞くのは難しいなぁ、と思いながら聞いたところ、「TORO社としては基本的にお客様(弊社のような代理店も含めて)から注文をいただいたものを誠実に作っているだけなので、その先の楽器とのかかわりはわからない」との回答でした。このことから、やはりTORO社はイタリアの職人会社。余計なことは考えずに、代々つちかわれた、良い物を作る作業をもくもくと続けているのだな、と感じた次第です
また、彼らは基本的にイタリア語しか話さず、「広告・宣伝」「マーケティング」といった発想はからきしないので、これだけ良い商品を一途に作りながら、イタリア以外では「TORO」の名前は知られていませんでした。ここ数年、日本の皆様のご愛顧をいただくにつけ、これではいけないという意識が少しずつ芽生えているようで、先にご紹介したジュゼッピーナさんのお嬢さんが「今勉強している「物流」の学士号がとれたら次は必ず英語を勉強する。ちゃんと話せるようになったらピエトロおじさんといっしょに日本にも行きたい」とのことでした。日本に限らず、もっと世界でTORO弦が知られるようになってほしいものです
end

楽器は在庫があれば全て試奏可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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