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TORO社訪問記-4 弦作りの基本姿勢と工程

2008/03/25

TORO社のピエトロ氏、ベニアミーノ氏と会話してわかったことは、TORO社の弦作りには「秘法」のようなものはない!ということでした
ごく当たり前のことをひたむきに守り続けて作っている。その結果がTOROの高品質を維持していると思います
いろいろなお話を聞いたのですが、要約すると下記のようになります
こういった事の積み上げがTORO弦のレスポンスの良さ、耐久性の高さにつながっているのだろうとイメージできました

s_TOROBeniamino-2.jpg  さぁ、はじめるぞ、とベニアミーノさん

1.原材料: 厳選した良質の原材料を使う
A,AB,Bなどのランクわけがあるらしいのですが、その中ではAランクのみ使用
 もとの供給業者の段階で新鮮な状態で洗浄してすぐに塩漬けにされたものを使う
 現状では産地はニュージーランドが主体。(シープガットの供給国は他にもあるが、ニュージーランドの現在の取引業者がベスト、との判断。一部で使われている中近東のものは材料管理が悪く、TOROとしては使えないとのこと)


2.材料の鮮度:加工された後もできるだけ鮮度を保ったまま製品化する
 供給業者から入荷した原材料を、その日に使う分だけを塩抜き。水に漬けてていねいに手作業で塩を抜いてしぼる。塩抜きしたあとの羊腸は、その日のうちに使い切る
 工場の温度はなるべく低く維持する、ということでお邪魔した日は外は雪が降っていましたが工場の中は暖房なし。イースター休暇で他の社員は作業をしていなかったせいもあるでしょうけど、普通なら暖房いれてしまうところでしょう。おかげで風邪をひきそうになってしまった

3.材料の選別と下処理:原材料のキズのあるものははね、余分な脂肪分はきれいに取り除く
 熟練を必要とする手作業。集中が必要。一本一本を手作業で選別。脂肪のヒゲのようなものはこの段階でひとつずつ丁寧に切り取っていく。これをおこたると、製品にしたあとでそこからほつれやすくなる
真ん中の写真がヒゲのように出た脂肪分を丁寧に一つずつ切り取っているところ。右の写真は厚みの違う材料を仕分けているところです


4.撚り掛け、乾燥
この材料を撚りをかけて乾燥させます。最終的にはこれを何本かよりあわせて一本の弦にします。この段階で、原糸の太さを区別して組み合わせ、その組み合わせで最終の完成品の弦の太さになるべく近づけます。こうすることによって、次のステップ、完成品の弦の太さを0.01mm単位であわせる際に、削り取る量を極小にでき原糸の繊維をできるだけ長いまま残すことになり、しなやかで強い弦ができます


5.最終の平滑化、太さあわせ
上記の工程で拗り合わせて作った弦はまだ表面が縄目状に少し凹凸が残っています。これを平坦にし、かつ0.01mmの単位で太さを調整するのは、TORO社で工夫した工具を使います。電動のローターと、マイクロメーターを組み合わせて0.01mm太さで仕上げ径を調整できます。特別に機械のカバーをはずして中のローターを見せてくれました


6.徹底した品質管理
 工場管理にはISO基準も採用されていました。下の写真の機械はテンションメーター。その横の壁に貼ってあるのがISOの基準書ですね。楽器用弦の世界でISOを気にする業界体質はまだありませんので、おそらく以前縫合手術用の糸を作っていたときに必要があって導入したのではないでしょうか。でも、そのおかげで工場内はとても整頓されて、作業基準も徹底しているという印象です。おかげで安定した高品質のガット弦が作られているのでしょう


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楽器は在庫があれば全て試奏可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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